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2012年3月23日 (金)

「言葉」‥2

人間は言葉を発明したのですが、言葉が文字化されるまで非常に長い時間がかかった
と言われています。つまりかなり長い期間人間の社会は音声だけ(身振りも含む)の言
葉の使用が続いていたということです。
そのような時代の人間の能力は体力だけでなく、言語能力(即ち聴覚能力と発声能力)
によって決められたのではないでしょうか。これは多くの種類の鳥類で、雄の雌に対する
能力(性的魅力)が囀(さえず)る能力(大きく美しい声で歌う能力)で決まっていることに
類似しているかもしれません(面白いことに、人間が聞いた囀りの評価と鳥の間で見られ
る評価とはほぼ一致するそうです)。また現在でもプロ歌手の評価は声の美しさ、音域の
豊かさが基本であると言えます(しかし今はテレビ等の影響で本来音声能力とは関係な
い容姿が人気を左右していますが)。
そして当然のことながら音声だけの言葉社会は物理的にもそれが伝播する範囲は限ら
れるため、広がりのない狭い地域内で展開することになりがちで、その結果として地域間
での音声言語の差異が生じることは避けられなかったはずです(今でも日本の中でその
名残りとして全国各地の方言があります)。従って、国家と呼ばれる規模の文明が形成
されるためには文字の発明を待たなければならなかったということになりましょう。現在に
おいて世界の大規模な文明遺跡として残っているものに共通する点としてどの遺跡も絵
文字(象形文字)の存在が示されていることがその証(あかし)と言っていいでしょう。
しかし音声だけの言葉の世界とはいえ、そこに思考のタイプ(型)があったのは間違いあ
りません。異性間や家族間、一族間で意思を伝達し、食物の確保のための狩猟や採取の
相談は音声言語でなされたはずです。その音声言語の使用とは思考することを意味する
のは言うまでもありません。そこで考案された生活技術や使われた道具の技術、あるいは
祭り・埋葬等の風習といった文化的なものまですべてが音声言語(つまり口伝)によって
代々伝えられていったわけです。
そして音声言語そのものがいかに高度なものであったかの一端は、現代に口伝伝承で残
る世界の多様な民族音楽の質(情緒性、楽律性)を見れば分かると言っていいでしょう。
そして長く続いた音声言語の基盤の上に文字言語が築かれたのです。この順序は決して
逆ではないことを忘れてはならないでしょう。

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