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2012年3月29日 (木)

「言葉」‥6

ここで言葉の誕生について想像してみましょう。前に述べました通り、人間の言葉は文字
以前に長い間音声だけだったのですが現代にその音声としての言葉は残っていません。
当然のことですが音は字と違って使われた痕跡が残りません。従って音声言葉の誕生経
緯というものを今考えるには思考テストのようなやり方で想像するしか方法がありません。
つまり言葉がどのようにして生まれ、使われるようになっていったかを考えるには、その誕
生プロセスを事実としてありそうなことを想像で構築する方法しかないのです。
これはそう難しいことではないのでここで少しやってみますと、例えば次のように声を使う
場面をありそうなものとして列挙することができるでしょう。
① 自分の家族・仲間がはぐれたり、迷ったりしないように互いに声を発して自分の所在を
  伝える。
② 食料となる果実等の存在を伝えようと家族・仲間に声で知らせる。
③ 獲物となる動物を声を出して追い立てる。
④ 敵(野獣、他部族の人間)を威嚇するために叫び声を発する。
⑤ 嵐、洪水など自然災害の危険が迫った時に警戒や避難を促す声を発する。
⑥ 求愛行動として声を使う(歌と言えるようなものもあったかもしれない)。
⑦ 家族・仲間の死に際して声を上げて悲しむ。
⑧ 喜ばしいことや楽しいことがあった時に声を発して喜んだり笑ったりする。
‥‥‥‥‥‥‥
この他にも声を発するような場面が無数にあったのでしょうが、これらはみな想像を超え
るほど長い年数・世代にわたった経験の積み重ねによって、身の回りの特定のものごと
に特定の音声を対応させる習慣が徐々に徐々に形成されていったと考えられます。
そして一定の人間集団(集落や部族)内でものごとを指す(意味する)音声が共有され、
使われるようになってきた時、いつの間にかそれは言葉が成立していたことであったとい
うことなのでしょう。
‥‥このプロセスにおいて生理学的にも重要な点は声の質(声色、声音)の使い分けで
あり、これによって自分の喜怒哀楽を相手に伝えることができ、それには口腔全体(喉、
唇、歯、舌、顎、頬、鼻)が使われ、さらに目の表情をも伴いながらこの動作が行なわれ
たということです。そしてこの発声伝達方法が(多少の変化はあっても)基本的には今に
引き継がれて使われているのです。
さらに音声言葉というものが、ある時を境目に劇的に誕生し、一挙に人間社会に広まった
などとはまったく考えられないと言っていいと思います。逆に音声言葉の基盤が長い期間
をかけて一定地域の社会に形成されていれば、そこへある時期に導入された文字言葉は
音声言葉に比べればはるかに短期間に広まることが可能だったと言えるのではないでしょ
うか。

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