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2012年4月27日 (金)

「言葉」‥18

少しマニアックな話になりますが、催眠療法に「自律訓練法」というものがあります。簡単に
言えば、言葉で自己暗示をかけて目的とするある精神状態へ誘導することです。例えば、リ
ラックスした仰臥の体勢を持続しながら、①気持ちは落ち着いている②両手、両足が重たく
暖かくなった③額は涼しくなった④太陽神経叢(へそのあたり)が暖かくなった‥‥と心の中
で順に唱え、この①~④を繰り返します。人により、訓練度合い(慣れ度合い)により①~④
の一回の時間はまちまちで3分~15分(慣れないうちほど時間がかかる)くらいで、3、4回繰
り返します。最後に覚醒(覚醒を唱え催眠を解く)して終わります。
私は小学校高学年の頃から強迫神経症の気質に悩んでいて、これを何とか自分で直そうと
少し大きな本屋の心理学のコーナーにあった本を見つけてこれを読みながら文字通り自分で
訓練したわけです。二十才の頃これに凝りだして(学生で時間がありましたから)3ヶ月程で
自分なりに会得して上の神経症も大分改善したと思っています。これは今でも(たまに思いつ
いた時に)やっていて、まあ一種の趣味の位置づけのもの(寝付けない時にやるというような)
になっています。
何が言いたいかといえば、この訓練法がまさに「言葉」主導によるもので、確かに両手足が重
たく暖かくなり、額は涼しくなり、へそのあたりは暖かくなり‥‥と誘導されるのです(人により
進捗度合いには差があるでしょうが)。「言葉」そのものに特段の興味を持っていたわけではな
かった当時は思ってもみませんでしたが、この一連の誘導作業が「言葉」を起点にすべて行わ
れることが何故できるのかという素朴な疑問があるのです。
言葉の力と言ってしまえば簡単ですが、言葉に文字通り力学的な「力」などありませんし、薬
理学的なこととも無関係です。それは、言葉(意識)が体に命じて体が生理的変化を起こすの
です。催眠術と言われるものはだいたい皆この手法なのだろうと思います。それにしてもまず
「最初に言葉ありき」なのです。私のような個人でなく、グループや社会集団のレベルでこれ
を行なうのが前にも述べました(「私」‥27)マインド・コントロールということになるのでしょう。
「言葉を制するものは世界を制する」と言っても大袈裟ではないかもしれません。世界史にお
いては歴史を動かした雄弁家は何人もいます。近代で最も目立つのは何と言ってもドイツの
ヒットラーで、今に残る彼の演説録音を聞けば(内容はよく分からなくても)何万(何十万)もの
聴衆があげる賛同のうなり声は恐ろしく、凄まじいとしか言いようがありません。どこぞのミサ
イル発射と核実験を繰り返す国が流す演出された演説セレモニーとはまったく異なるもので
す。しかし演出されたものでも効果があるから(特に対内的に)やっているとも言えるでしょう。
良い悪いは別にして人間を瞬時に動かしてしまう力を言葉は持っていて、それは金銭・名声・
昇進等の欲望による契機など比較すべくもなく絶大な力であるということです。

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