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2012年6月 1日 (金)

「言葉」‥27

謎かけのような話をやってみましょう。ものごとを喩えるものが言葉であることが間違ってないもの
とします(これを定義とします)。ここでものごとの数は無限にあるのでしょうか。ものごとの数が無
限であれば当然言葉の数も無限にあることになります。今私の手元にある「大辞泉」(小学館)に
は22万語が収録されているとあります。世の中のものごとの数が22万個であればこれは絶望的
な少なさですが、言葉は別の言葉との組み合わせで新たな言葉を作ります。分節された最低単
位の言葉(単語)の数に限りがあっても、その言葉の組み合わせは無限に近いといってもいいわ
けで、従って言葉が表わす世の中のものごとの数も無限にあると言えそうです。これなら絶望する
必要はありません。
それではものごとの数と言葉の数ではどちらが多いでしょうか。定義からは、ものごとに応じて言
葉が付されますから、言葉の数はものごとの数を越せないように思えます。しかし言葉の組み合
わせによって、見たことも聞いたこともない言葉(つまりこの世に存在しないものごと)を作ることは
簡単にできます。例えば、1万度のお茶、月に渡る橋、空飛ぶ地下鉄、男の子宮、カメムシの還暦、
クジラの三角関数、猫の天皇、ドジョウの総理大臣(これはいますね)‥‥と限りなく作れます。
これらは一見して荒唐無稽な言葉です。つまり意味のないデタラメ言葉に見えます。それはこれら
の言葉を現実性という尺度から見るからです。非現実的ということです。しかし、非現実的という判
断ができるのはその言葉の意味を知っているからです。それは当然のことで、組み合わせ言葉は
非現実的であっても一つ一つの単語は意味のある独立した言葉(ものごとの裏付けがあるもの)
だからです。
しかし、ものごとの裏付けのないような言葉も多くあります。人間が作り出した観念用語、抽象概
念と呼んでいる言葉です。例えば、自由、平等、権利、義務、‥‥神、魂、天国、地獄、宇宙の始
まり(ビッグバン)、‥‥平和、正義、勇気、とこれも数えあげればきりがありません。これらは外部
的・物的なものごととは別に人間の頭の中だけにある言葉といっていいでしょう。
もちろん「ものごと」をこの世のすべてのことの意味にとれば、抽象概念もものごとのうちになり、言
葉はすべてものごとの裏付けがあるものになります。そして、最初に述べた「ものごとを喩えるもの
が言葉である」という定義も、人間が音声を発する場面というものが物的・外発的/心的・内発的と
いった区別はなく、文字通り「すべてのこと」に対して自分達が発した音声が長い時間を経て共有
化(言葉化)したというものですから、これもこの考え方だと言えます。
しかしさらに一歩進んで、主客転倒して、言葉で表されたものがものごとだという言い方まですると
すれば、言葉を離れては「世界」は無いかのような様相を呈することになります。そして「言葉で表
された」とは「認識された」と同じこと、「ものごと」とは「対象(現象)」と同じことです。縮めて言えば
「認識されたものが対象である」という、近代の認識論哲学のテーゼのようなものとなります。

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コメント

ドジョウの総理大臣で思わず吹き出しました。
「人間の想像できることは必ず人間が実現できることである」
なんて言葉をどこかのお偉いさんが言っていた気がします。
科学技術の進歩によって生まれたカーボンナノチューブの開発により
軌道エレベーターなるものの実用性が高まりつつある昨今
月に渡る橋という言葉もその現実味を帯びつつある気がしますね。
宇宙の拡大に伴い、森羅万象もまた拡大しているのであれば
言葉もまた然り、日々拡大してゆくのではないかと思います。

潤さんへ
昔からマンガ(特にSFマンガ)の世界は未来を先取りしていて、いずれ将来現実になると言われてきました。これはマンガの先見力と言えますが、マンガ作家が自分の夢や希望をマンガに託して書き続けたら、
それが人間共通の願望でもあったということが稀ではないからなのでしょう。ロケットで人間が月へ行った
り、人間のようなロボットは既に現実になりました。そして技術的には可能ですが倫理問題でまだ実現し
ていないクローン人間(家畜は既に実用化しています)の誕生や、あと寿命の飛躍的長期化も同じ問題下
にあるのでしょうが(冷凍人間のことです)、そう遠くない将来に現実化しそうです。
言葉は、ものごとの言葉による喩えという受動的な側面だけでなく、言葉(思考)が新たなものごとを創り
出すという能動的な側面を持つ事例が確かにあるのです。‥‥なにせ言葉は「神」を創ったのですから。‥

潤さんへ
昔からマンガ(特にSFマンガ)の世界は未来を先取りしていて、いずれ将来現実になると
言われてきました。これはマンガの先見力と言えますが、マンガ作家が自分の夢や希望
をマンガに託して書き続けたら、それが人間共通の願望でもあったということが稀ではない
からなのでしょう。ロケットで人間が月へ行ったり、人間のようなロボットは既に現実になり
ました。そして技術的には可能ですが倫理問題でまだ実現していないクローン人間(家畜
は既に実用化しています)の誕生や、あと寿命の飛躍的長期化も同じ問題下にあるので
しょうが(冷凍人間のことです)、そう遠くない将来に現実化しそうです。
言葉は、ものごとの言葉による喩えという受動的な側面だけでなく、言葉(思考)が新たな
ものごとを創り出すという能動的な側面を持つ事例が確かにあるのです。
‥‥なにせ言葉は「神」を創ったのですから。‥

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