« 「性格」‥12 | トップページ | 「性格」‥14 »

2012年11月19日 (月)

「性格」‥13

 最近もしばしば話題になる「団塊の世代」とは昭和22年度(1947年)、23年度、24年度生まれの世代

のことを言います。私もこの最終年度に入ります。この「団塊の世代」とは言うまでもなく作家堺屋太

一が昭和51年に刊行した小説のタイトルです。まだ彼が通産省(今の経済産業省)の官僚だった時に書

いたものです。私はこの小説を2年前に初めて読みました。はっきり言ってこの小説は格調高い一流小

説というものではありません。ただ日本がオイルショックという、戦後に続く高度経済成長後に初めて

味わった大きなダメージの残る、一種の社会不安(虚脱感)が漂う中に登場した、近未来の日本の社会

風景を描き話題性の高い本だったということで、すぐにこの「団塊の世代」という言葉が独り歩きし、

良くも悪くも社会問題をはらむ言葉として定着してしまったのです。

 確かに日本の現代の世相を語る上でこれほど“はまった”言葉は滅多にないかもしれません。ベビー

ブームに始まり、学校の教室不足、高校・大学への進学ラッシュ、大学紛争、新婚旅行の海外旅行ブー

ム、ニューファミリーの登場、住宅・マンションブーム、バブル経済(これはこの世代だけが犯人では

ありませんが)‥‥そして直近が大量定年と年金問題という具合に、目立った社会現象がすべてこの

「団塊の世代」の存在とその動向で説明ができてしまうからです。つまり、その社会現象の原因が「団

塊の世代」であるという厳密な検証などすることもなく、「団塊の世代」を持ち出せば誰も反論せず議

論の片が付いてしまうということになったのです。そして誠におかしなことに、そう呼ばれる団塊世

代の人間自身がそのことに一種得意気な気持ちまで抱いてしまったのです。これは自分達が常に社会

(問題)の中心に置かれることからくる思い違い(錯覚)だったのでしょう。しかしこれは団塊世代が

世論と共謀したという側面でもあったのです。私は同世代のサラリーマンが“臆することなく、堂

々と”自分が「団塊の世代」であると自己紹介する場面をこれまでに何度見てきたことでしょうか。

‥‥しかし堺屋太一の視線は明確で、この世代を文字通り団塊(=堆積岩中の異質な固まり部分、土塊

:つちくれ)と実にシニカルに名付けたのです。それは≪何かと社会のお騒がせを引き起こす奴ら≫く

らいの意味が込められていると言っていいでしょう。堺屋太一自身は昭和10年生まれで一回り上という

立場から客観的にこの世代を眺め分析することができたということでしょう。私はこれを「蔑称」と言

うつもりはありませんが、決して有難がって頂く名称ではないと言っておきたいのです。堺屋太一はこ

の小説の大ヒットにより売れっ子作家として(やがて経済評論家としても)独立したのですが、あえて

(相当な)悪口を言わせてもらえば堺屋太一は佞者(ねいしゃ、官僚のままであったら佞臣)一歩手前

の人でしょう。つまり口先巧みな才人ですが仁は薄いほとんど要領が立ち勝る人ということです。しか

し人間の「性格」を見抜き、「言葉(の力)」を操る点で類い稀な才能を持っていたのは間違いありま

せん。この「団塊の世代」はあと20年もすれば自然消滅するのか、それとも「歴史的言語」として残

るのかは分かりません。私はそれよりも堺屋太一自身が亡くなる前にこの言葉の“はまりよう(的中事

情)”の感想を本人の口から聞いておきたいものです(それをまた口先巧みに言うだろうと思うのです

が、またすでにどこかで言っていたかもしれませんが)。

 ついでの話として、今から78年前の私が会社(金融機関)勤務時代に法人顧客先に当社の地区担当

役員を表敬訪問で先方の専務・常務に案内した時のこと。当社の役員が話題の中で「いよいよだんこん

の世代の大量定年時代を迎えますが‥‥」とやってしまったのです。私は内心で(たは!読み間違えてる!!)

と舌打ちし恐る恐る相手の役員を見ると目が点になっていたのを見て、顔から火が出る思いをしたもの

です。面談が終えて次の訪問先へ向かう車中、私はあれこれ思案したもののいい考えが浮かばず、その

まま次の法人顧客(今度は社長)を訪問したらまた同じ話題を出し「いよいよだんこんの世代の‥‥」

とやってしまったのです。帰りの車中で我が役員は「いや実に意味のある訪問だった」とご満悦の態だ

ったのですが、私は(しばらくあの会社には行けないな)となさけない思いだったのです。‥‥最近の

バラエティー番組の「漢字当てクイズ」を見るとホロ苦く思い出すのです。

<保土ヶ谷の外人墓地にも紅葉の気配が見えます>

Photo

4

3

2

1

« 「性格」‥12 | トップページ | 「性格」‥14 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1627554/47901518

この記事へのトラックバック一覧です: 「性格」‥13:

« 「性格」‥12 | トップページ | 「性格」‥14 »