「性格」‥25
「性格」よりも「言葉」シリーズで言っていれば合うような話ですが、何年か前から“KY”(空気が
読めない)という言葉が使われるようになりました。もとは隠語(一部の仲間内だけで通じる言葉)で
使われたものでしょうが、今やすっかり通用語になってしまいました(最近はこのようなイニシャル語
全体をKY語と呼ぶらしい)。
私の印象ではKYは最近5~6年位前から世に出始めたように思います。最初は恐らくネット上のツイー
ト文の中で使われたものなのでしょう。ネット上ではスピーディーが旨とされるせいか、できそうな言
葉はみな略語にしてしまうからです。
しかし、「空気を読む」あるいは「空気が読めない」という言い方はそもそも従来からあったもので
す。「空気」とは身の回りのいわゆる空気の意味以外に、その場の雰囲気・気分という意味もあり、
「不穏な空気」という言い方などがある通りです。それをKYというイニシャルにしたのが最近のことで、
これは、その場の空気が読めず少し浮いている人間、少しズレている人間を指す略語というわけです。
つまりKYというのは、本来は「あなたはこの場の空気が読めていませんね、それはダメですよ」と本人
に言うべきところを、直接言わずに‥‥アイツは空気が読めないヤツだな‥‥と思い、その思いを共有
した回りの者達が、その本人がいない時、いない所で「○○はKYだから」と誹(そし)る言葉として使
われるのです。直接本人に言わず、オブラートにくるむだけ優しいイメージがあるかもしれませんが、
逆にその分陰湿であるとも言えます。つまり「隠語」とは多くの場合「陰湿語」・「陰口」に通じる
ものなのかもしれません。
もっとも、本来の言葉をそのまま表現せずアルファベットのイニシャルで言うのはKYが最初でも何で
もなく、英語が日本に入ってきた明治・大正時代からあったようです。私の子供時代でも、変態を“H”
と言ってましたし、性的なジャンルで“S”や“M”があり、少年少女の性的遊びのレベルを“A、B、C
‥‥”と暗号化したり(よくは知りませんが‥)、探せばキリがないほどあります。また、NHKやTBS
というようにマスメディアもこぞってイニシャル化を取り入れてきた歴史があるのです。
一方、本家の英語では頭文字表記はごく当り前の文法です。人名で多く使われていますし(MJ:マイ
ケル・ジャクソン、マイケル・ジョーダン、JFK:ケネディ大統領‥‥)、あらゆる分野の固有名詞や
専門用語は直ちにイニシャル化されますから、その数は無数に近くあります(CIA、FBI、NASA、FRB、
IBM、GM、FIFA、WHO、DV、‥‥)。文章略語もASAP(as soon as possible)、etc(et ceteraこれはラ
テン語)など豊富にあります。
そもそも今使っている日本語も中国から導入した複雑な漢字を簡略化し、ひらがな、カタカナも作っ
てきたというのが歴史的事実ですから、このような現象(略語化)は言語の本質と言って間違いないで
しょう。ひと言で言えば“言葉は使われ易いように絶えず変化する”ということです。
KYに話を戻せば、「空気が読めない(者)」をイニシャル化すること自体を良いとか悪いとか言うこ
とはできず、KYが日本語として定着し残る言葉かどうかも実は誰も分からないということでしょう。
このようなことはいわば“流れにまかせる”しかないということです。そしてすべての文化メディア
(新聞、テレビ、ラジオ、本、パソコン、携帯‥)はこのような“流れ”に乗っているという位置付け
にあると言えます。つまり人間社会の中でこれらのメディアは時流を作り、時流を後押しするのですが、
逆に人間に利用されなければそのメディア自体が時流から外れ消滅する運命にあると言えるでしょう。
こうなると日本では古代に漢字を導入したり、近代に標準語を定めたりしたのは表向きは統治政府サ
イドの能動的働きかけが契機とされていますが、そうすることが時流だったと言えなくもなさそうな
気がします。歴史に“もしも”の仮定は禁句(ナンセンス)ですが、もしその時流を取り入れなかった
ならば今の日本は大分違う風景となっていたことは間違いないでしょう。良かったか悪かったかはやは
り誰も言い得ないことでしょう‥‥。
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こんばんは
最近の略語は殆んど分かりません(・。・;
KYは「空気読めない」って解ってはいるのですけど
どう言う訳は頭の中で、K自体が気持ち悪いとか、汚いと言っている感じに想えて
どうも好きに成れない言葉です。
略語も階空さんの言うとおり、昔から有りました。
SやMも良く考えればそうですね正式名称が有るのですから
なので、どこまでがOKとかは無いのですよね
今の若い子は訳の解ら無い事を言うって言ってますけど
実際、略語は昔から使われていたのですから
時代の流れがあるので今の時代の略語を全否定は出来ないですね
投稿: na nori | 2013年2月28日 (木) 00時58分
コメントありがとうございます。
na noriさんのブログと違い、私にコメントはめったに来ません。最近でもna noriさん以外には誰からも来ません。これは私のブログが面白くないからに決まってますが、そのような空気を私は読めないのも事実なのです(読むのが面倒くさくなったとも言えます)。考えてみれば空気を読むのはかなりエネルギーが要るんですね。他人の気持ちを察知することは奇跡的な技で、老人には一番苦手なものだと今さらながら理解します。と同時にリタイアしてよかったと痛感しています、本当に!アハハハ!
投稿: 平戸皆空 | 2013年2月28日 (木) 08時55分