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2013年6月23日 (日)

「性格」‥44

蛍にちなんだ話題をひとつ(お勉強ですかね)。

昔から蛍の光の持つ幻想的な性格からか、恋の場面に恰好な材料として蛍は歌われ使われてきました。

日本の蛍の代表であるゲンジボタルの名の由来と言えば一つは清和源氏(いわゆる源・平の源氏)で、もう一つは源氏物語の主人公の光源氏です。前者の説の方が優勢のようですが私は後者の説の方を採りたいと思います。前説は蛍のもう一つの代表的種類にヘイケボタルがいるから、これで勝つ(大きく強い)源氏と負ける(小さく弱い)平氏(平家)の対が当てはまるではないかというものだろうと思います。しかし、日本でゲンジボタルとヘイケボタルが同時に名付けられたという証拠はありませんし、この2種類の蛍は1年の中で発生時期が異なり縄張り争いもせず、従って源氏・平氏の対という根拠も怪しいものでしょう。

私は蛍と言えば昔からゲンジボタルを指して呼んでいたのであろうと思います。なぜならその年のうちで最初に登場し、何と言っても圧倒的な存在感を示すのはこの大型の蛍ですし、1~2ヶ月後に目立たない形で登場する小型の蛍は人々にそんなに意識されなかっただろうと思われるからです。ヘイケボタルの名は近代になって、蛍の種類の違いを示すため名付けようとした時に既に先行して名付けられていたゲンジボタルを清和源氏由来と誤解して、対の名としてヘイケボタルを当てたのだろうと思うのです。

ではなぜ蛍をゲンジボタルと呼んだのか、これはやはり出典元と思われる「源氏物語」を探るしかないでしょう。

私は恥ずかしながら日本が世界に誇るこの古典を最近まで読んだことがなく今年になって読み始め、当然まだ読み終わっていません(年内に読了すればいい位でいます)。そしてこの長編の真中あたりに「蛍」の章があるのです。大雑把に説明すれば、源氏はかっての愛人(夕顔)の忘れ形見の娘(玉鬘タマカヅラ)を養女にしながらこれに懸想し、それにもかかわらず理想的な婿を世話しようとその一人として、ある夜自分の腹違いの弟宮(兵部卿宮)を引き合わす手引きをします。そして几帳だけを隔てて娘の部屋の暗闇の中で二人が気配を探りあう陰から源氏はかねて用意の蛍を放つのです。一瞬蛍の光によってかいま見えた横臥する娘の姿の想像以上の美しさに弟宮は完全に“イチコロ”となってしまいます‥‥。

その時に交わした歌が次のものです。

弟宮:「なく声もきこえぬ虫の思いだに人の消つにはきゆるものかは」(鳴く声も聞こえない蛍の光でさえ、人が消そうとしても消えるものではありません。まして私の胸の炎はどうして消せましょう)、とすっかりのぼせ上がってしまうのですが、

娘:「声はせで身をのみこがす蛍こそいふよりまさる思いなるらめ」(声も立てずにひたすら身を焦がしている蛍のほうが、あなたのように声を出して仰るのより思いは深いのではないでしょうか)、とそっけなく応えるのです。

‥‥少し前には自分に言い寄った養父(源氏)がこんな夜這いの演出まですることに娘はますます困惑し思い悩んでしまう‥‥という複雑な筋立てで話は進んで行きます。

そして、この場面で果たした蛍の役割(効果)というものに甚だ強い印象を受けない人はまずいないでしょう。源氏はここでは蛍を使って恋の場を意のままに操るマジシャンであり、この蛍をゲンジボタルと呼ぶ所以となったのだろうと誰もが納得するのではないでしょうか。

 こうして蛍はゲンジボタルが早々と確定していて、後から別の種類を(誤解から)ヘイケボタルと命名したというのが真相ではないかと思うのです。

ネットから取り出したゲンジボタルの写真です。

2匹並んでいるのは、小さいほうがオス、大きいほうがメスです。

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コメント

こんばんはfullmoon
今日は月が見えませんね(~_~;)
残念。
とても勉強に成る、素敵な話
蛍で心が熱く成る人、それをも無視する人
実は私詳しく読んだ事も有りません…(・。・;
もっと知りたくなりますね。
また書いて下さいねpc
蛍を私の側に置こうかな…coldsweats01

今晩は。
ゲンジボタルはちょうど今頃のムシムシする朧月(本当は月が見えない方がいい)の晩に
ワット湧き出るように出現するんです。クライマックスは3~4日位ありましたかね。
しかし田んぼに農薬が散布されるようになって蛍が乱舞する風景は消滅しました。
一度失われ自然は二度と蘇らないということを痛感します。
‥‥「源氏物語」は日本人の心の故郷が書かれていますよ。

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