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2013年7月10日 (水)

「性格」‥48

  ⑩  護憲派の抱く意見に、世界の多くの国が日本の「平和憲法」を模範とし憧れているというものがある。これは自家撞着も甚だしい錯覚である。世界の多くの国が本気で憧れているなら日本的「平和憲法」を制定する国がどんどん出てきても良いはずである。しかし今までそんな話は聞いたことがないし、今後もまずありそうもない。仮に日本の憲法を褒める外国の為政者がいても、その国が日本と同様の「平和憲法」を制定しない限りそれはほんの“外交辞令”に過ぎないのである。

現状の世界情勢の展望の中でどこの国がそのような憲法を持とうとするだろうか。

もう一つ付け加えれば、日本は「平和憲法」があるために国際紛争に巻き込まれることなく平和が維持されているというものがある(平和憲法を盾に自分が平和を守ったとまで言う図々しい輩もいる)。これは上記の錯覚をもう一回り上回る錯覚であろう。日本は朝鮮戦争でもベトナム戦争でもアメリカから参戦を要請などされていない。あったのはただ国内の軍事基地をアメリカ軍の兵站基地として使うという方針であり、しかも使用に関する事前の要請(事前協議)などもなかったのである。それは当然である。アメリカは日本の憲法に“非武装”と“戦争放棄”を盛ったからには日本を戦争に引き入れることは明らかな矛盾であり、自ら日本の憲法を無効にするようなことをする訳にはいかなかったからである。

このような事実を無視して「平和憲法のおかげ」を云々することは“お人好し”どころか“お目出度い”というレベルであろう。この確かめようとさえすればすぐに判明するようなことをなぜやらないのか理解に苦しむのであり、このようなことをこそ“思考停止”と言うのであろう。

 ⑪  一方、アメリカの立場からすれば、日本の憲法改正の動きは面白くないことであろう(当初から予期していたにしても)。実質的に自分が制定した憲法が否定されることを意味するからである。事実、最近の日本の改憲論の高まりに対し、“日本は太平洋戦争の敗戦、無条件降伏という事実を認めないつもりなのか”という感情論まで見え隠れし始めているのである。日本の改憲論者の頭から最も抜け落ちている点は実はこれなのである。そして忘れてはならない非常に重要なことはアメリカは今でも、そして今後も日本が軍事強国になることは望んでないという点である。アメリカは日本と“対等な”軍事同盟を組むなどとはこれっぽっちも考えていないのである。このことは今後どうあろうとアメリカの利害と対立する点なのである。アメリカは20世紀に日本と戦争を行ったことは決して忘れるはずはなく、将来的にも日本との戦争など起こり得ないとは決して思ってないはずである。従って日本の軍事力の明確化(増強)は現行の日米安保条約の大幅見直しに繋がることは避けられないだろう。それは“沖縄の米軍基地移転問題”など比較にならない重大な問題を惹き起こすであろう。それは好むと好まざるとにかかわらず、多かれ少なかれ軍事対立、軍備競争の意味合いを孕むからである。その交渉は想像を絶する“ハードネゴ”となるのは間違いなかろう。今の日本の為政者にその認識があるかといえばまったく覚束ないとしか言えない。はっきり言えばこの見識・覚悟を持った政治家は今の日本にはいないだろう。未だ生まれていないと言えるほどかも知れない。それを育む社会世論的、社会教育的環境が存在せず、この見識を具えた政治家が輩出するのは程遠いお伽話の世界のことのようになってしまっているからである。

   日本は戦後70年近くを経過して、国家の、政治の大本を考察する基盤を失ってしまったと言わざるを得ない。いや正確には、この基盤を自ら放棄して何とこの“無(ノーアイデア)”の状態にすがっている有様だと言っていいだろう。つまり被占領国体質が足先から頭のてっぺんまで染み付いてしまったと言っていいだろう。

⑫  以上の“ノーアイデア状態”を身を以て世に晒してしまったのがつい先頃の前民主党政権の鳩山由紀夫なのである。「沖縄のアメリカ軍基地の国外移転」という国内向けには極めて耳障りの良いことを掲げて自民党から政権を奪ったものの、いざアメリカとの交渉に臨もうとした鳩山由紀夫は“非常に哀れな有様で”首相を辞任した。最近の首相交代はほとんどが(つまらない)国内的理由だけからのものが多いが、このケースは典型的な「外交の失敗」によるものである。しかしこの“大失態”を笑える日本人がいるのであろうか。鳩山由紀夫の恥は日本人全体の恥であったはずである。特に自民党はまったくこの資格はない。戦後の長きに渡りこの路線《アメリカの言うことだけを素直に聞いていればいい》を敷いてきたのは自民党に他ならないからである。

アメリカは日本の国内事情を慮って自分の戦略的軍事基地を他所へ移そうなどとは夢にも考えていないのである。私達日本人はこの出来事で一体何を学んだのだろうか。最近「失敗に学ぶ」というようなことがもてはやされているが、本当に失敗に学ぶのは実は容易なことではないのである。

 ⑬  今回の安倍晋三の改憲準備の動きは、改憲の最終ハードルである国民投票の実現を図ろうとするものだが、果たしてその先で待ち受けているアメリカに対する“ハードネゴ”を乗り切る覚悟・ヴィジョンを持っているであろうか。私には単なるムードがあるだけで(尖閣や竹島で国民感情が煽られただけで)、鳩山由紀夫の“ノーアイデア”とそう遜色なく見えてしまい、篤志政治家らしい捨て身の深謀遠慮は残念ながら伝わってこない。国民世論を沸騰させるべくストレートな見解表明(なぜ「平和理念」「非武装」を改めるのかの納得の行く説明)をしないまま手続き面だけ先にやろうとしているからである。本当に議論百出した国民全体の意見を踏まえて事に当たらなければ、誰が何度やっても失敗するのは目に見えている。しかし何度も言うが、これは決して簡単なことではない。アメリカは自国の利害においてメリットを明白に認識しない限り軍事戦略において他国に譲歩するなどということは絶対にないからである。極論すれば、日本の憲法がどうなろうとアメリカが不利になる選択(軍事的・外交的)をすることなどあり得ないのである。

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