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2013年9月13日 (金)

「ハチ」‥9

 さてハチのお客さんの中には色々な人達がいて、ほとんどが私がハチの常連になる以前からの経緯や因縁に

るものなので、それに私が異議を言える立場ではなかったとはいえ、私から見て「何でこの人達がいるん

だろう?」と不可解に感じ、結局最後まで腑に落ちなかったことがあります。それは一群のSFファンのことで

す。SFつまりサイエンス・フィクション(空想科学小説)のことですが、ハチに通うようになって暫くして気

が付いたことに、時々明らかなSFファン(今風に言えばSFオタク、SFキャラ。もちろん外見から分かるはずは

なく後で知ったのですが)の、ほとんどが二十歳前後の若者(男女)で構成されている人達がハチに集まって

くることがあったのです。彼らはいわば“半常連”で、私のように単独でいつの間にか常連に“認定”された

ということではなく、つまり一人で来てさりげなくカウンターに座り酒を飲むのではなく、34人から多い時

78人で来てホールのテーブル席の方に陣取り慣れた雰囲気でワイワイガヤガヤとそれなりに楽しそうに過

ごして帰っていくのです。時々ハチママもそのグループの方に顔を出し話に加わったりしていたので、後で聞

くと「あれはSFファンの子達や」ということでした。それ以上詳しい説明もなく、私もSF小説は小学校時代に

子供向けのものを少し読んだくらいであまり縁がなく興味もなかったのですが、やがてある特定のイベントが

ハチである時に彼らも集まってくるということが分かりました。それは一つは“山下洋輔トリオ”のライブの

時、一つは“筒井康隆の集い”の時です。しかし後から聞いて山下洋輔と筒井康隆は、その細かい経緯は知

りませんが、極めて親しい友人同士だということが分かりました。そしてハチに来るSFファンとは筒井康隆フ

ァン、言い方を変えれば“筒井康隆の追っかけ”だったのです。彼らにすれば筒井康隆は憧れの人でありいわ

ば“教祖様”だったのでしょう。従って教祖様が山下洋輔と親しく、そのジャズが好きなら自分達も好きなの

であり、そのパワースポットがハチであれば何かの時にはすぐにハチに集まるということだったのです。

 そんなことが薄々分かってきてから私は筒井康隆の本を何冊か文庫本で読んでみました。当時ですから筒井

康隆の初期の頃の本で、「幻想の未来」「家族八景」「時をかける少女」「俗物図鑑」「狂気の沙汰も金次

第」などですが、それらの底に共通して流れていた要素は、前衛性、ナンセンス、スラップスティック(どた

ばたギャグ)で、ああなるほどこれは山下洋輔のジャズやタモリの技芸に通じるものだとすぐに感得できまし

た。それでもなぜ筒井康隆の“追っかけ”がいるのか、なぜ二十歳前後の若者達が“ワーイ、筒井せんせ

ー!”とばかり離れず纏わりつくあり様なのか、そして何よりも筒井康隆自身がこの“追っかけ”の存在を

どう思っていたのかは結局聞けずじまいだったのです(ハチで何回か筒井康隆を見たにしても親しく話したこ

とはありませんでした)。それを深く追求したところで、私がハチでジャズに耽(ふけ)るのと、筒井康隆の

“追っかけ”SFファンになるのと本質的に大した差はないかも知れないと、腑に落ちないながらも感じていた

のです。

 

<文面とは関係ありませんが、ルイ・アームストロングの「バラ色の人生」です。ハチに行けばどこかで必ず

この曲がかかったものです。お兄ちゃんが一番思い入れのあった曲だったようで、それはハチとともに歩んだ

人生が「バラ色の人生」だったのでしょう。>

Photo_2


http://www.youtube.com/watch?v=HsLLfrRg4To

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コメント

こんにちは。
ハチでは沢山の方との出会いが有りますね(*^_^*)shine
素敵ですnotes
追っかけの人たちはどんな事にでも繋がりを見つけるのですね
凄いです
向井康隆さんは小さい頃から凄いIQだったんですね
結局は追っかけの存在にも気が付いていても気にしなかったのかな~(~_~;)

なにかに夢中に成るflair本質的には変わらないのかも知れないですね(#^.^#)
今日の音楽も題名は知りませんでしたけれど、聞いた事が有る曲です(* ̄ー ̄*)

こんばんは。
筒井康隆の“追っかけファン”は筒井康隆の本は全て買ってくれるでしょうから、
筒井康隆にとって大事なお客様ですね。“お客様は神様”ですから筒井康隆は
しつこく纏わりつくファンに内心ヘキエキしても、ファンが自分から離れてしまわ
ないようにそれなりに神経を使って付き合っていたんだと思います。
彼の書いたものを読む限りでは、そんなにお人好しの人間とも思われないです
し、そばで観察した限りではかなり繊細な神経を持つ(神経が細いとも言える)人
に見えましたから。
たまったストレスは、割り切って生活まで“ギャグ化”することで発散してしまうタ
イプの人なんでしょうね。この辺はタモリも似てますね。

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