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2013年10月23日 (水)

「ハチ」‥20

「ハチ」シリーズでジャズとこれにまつわる人のことをお話しているのですが、ハチとは関わりはないジャズ

ことで私の会社時代の忘れられない思い出があります。

 私は金融機関(証券会社)で法人相手の営業部門で主に仕事をしていたのですが、その厳しさの点は社内で、

あるいは業界内で屈指の部門ではなかったかと今でも思っています。業務内容は一言では説明し難いので省き

ますが、朝から晩まで(休日も)気の休まる暇のない、という言い方が決して大袈裟ではない仕事でした。そ

のような部署のボス(本部長:社内では常務・専務クラス)はいわば群雄割拠する戦国時代の武将と言えばい

いでしょう。会社ですから本部長も数年ごとに替わっていき(昇格したり失脚したりで)、私は67人のボス

に仕えたのですがその中に☓☓常務という人がいました。あの織田信長が生きていればこんなだったろうと囁

かれるほど群を抜いて鋭く厳しい人だったのです。

 例えば、担当会社への宴席接待がある日に組まれたとします。担当者はその朝には「接待メモ」を本部長に

提出しておかなければなりません。そのメモは、接待の目的、会社の業績、出席者の略歴、当社との取引情況、

最近の話題‥etcを事細かに書き記したものです。本部長は毎朝その日の予定に応じた幾つかの書類(営業成績、

検討案件、訪問メモ、接待メモ‥)に素早く目を通すことから始め、疑問点があればすぐに担当者を呼びつけ

質します。朝から職場全体の空気がピンと張り詰めていて、呼ばれた者は直ぐに本部長のデスクの前に行って

淀みなく質問に答えていきます。そこでいい加減な当て推量を言うと、ギロリと睨まれ、「じゃあこの点はど

うなんだ?」と突っ込まれ返答に窮すると、メモを突き返され「馬鹿野郎!何故もっと調べない!おいライン

部長、この担当者は何をやっとるんだ!」とライン部長も呼ばれ一緒に叱責されるという按配です。‥‥

 そして晩の接待が終わりお客様の車を送り出し、本部長も送り出してから、私は接待の情況を反芻し手落ち

なかったか反省します。気にかかることがないことはないが、まあ無事に済んだ、と帰宅します。‥‥翌

朝出社すると既に席にいる本部長に直ぐに呼ばれます(呼ばれなくても昨晩のお礼の挨拶をするのですが)。

そして「昨日の貴様は何だ、調子に乗って!どれだけ偉いつもりでいるんだ!」とカミナリが落ちるのです。

それは宴席の最後のカラオケ(ギター伴奏者による)で、私が3曲目を歌ったことです。この場合、口火を切

るのは大概が担当者で、座が白けないように(見苦しくない程度にソツなく)歌って、次にお客様が歌い易い

雰囲気でマイクをリレーしていきます。お客様側にこちらの倍以上歌ってもらえばいいのですが、たまに担当

者がもっと歌うようお客様にせがまれる時があり、ついつい応じてしまったりするのですが、それで私は昨晩

3曲歌ったです。先方の社長、役員、部長様方は5曲位ずつ歌い、本部長も何曲か歌って盛上がっていまし

た。私も少しおだてられてしまったなと気にかけたのですが、まさにそのことを本部長は叱ったのです。それ

を聞いている職場の仲間は、「ククッ、○○の奴ドジッたな!」と呟くのです。

‥一事が万事そういった具合で、担当会社への同伴訪問の車中でもどんな質問が飛んでくるか恐ろしい思い

緊張し通しで冷や汗の途切れることはなかったものです。私の会社勤務時代で人から“薫陶”を受けたのは

の時こそだったと言えるのです。

 そして後年私の地方赴任時代に、関連会社役員に退いていたその人の訃報が伝わり、私は帰宅して葬儀に

参列したのですが、最後のお別れの式の時にBGMで何とジャズが流れたのです。私の知らない曲ですが間違い

なくジャズで、静かな葬送曲が流れるのが通常なのに少し騒がしいくらいで、私は「え、何だこれは?」と

少なからず驚き、式後に旧知の人とお茶を飲みながらそのことを話すと、「ああ、☓☓さんはジャズが好き

だったから遺族がそうしたんだよ」と教えてくれたのです。「な~んだ、それならいつかジャズの話で☓☓さ

んと意気投合できたものを!」と私は思わず悔悟の念を口にしたのですが、しかし思い起こすだにそんなこと

ができたはずもない、どんな時でも気の緩むことは一切許さない人だったと結局は合点する他なかったのです。

 

<家に帰ってから「オレの葬式の時にはこのジャズを流してくれ」と冗談で言ったら子供に「忘れるから

ちゃんと遺言に書いといて」と真面目な顔して言われました。遺言はまだ書いていませんが、曲の一つが

ハービー・ハンコックの「ミモザ」で、私の鎮魂にはピッタリだと思ったからです。>

 

 

1Photo


http://www.youtube.com/watch?v=ekOlF-oFeH4


<コメントのほうの「飾りのついた四輪馬車」です>

http://www.youtube.com/watch?v=2OnTcJwq-eU&list=PL943ED6D06ABAE4F7

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コメント

こんにちは
そちらは雨降ってませんか
この台風は停滞気味でどうなるのか心配ですね
お気を付け下さいね。

ジャズ今も教室でながしています
You Tubeでダウンロードして、
ノリの良いジャズ。とやる気の出ない時に聞くジャズ。
Jazz静かな夜のカフェ。
落ち込んだ時に聞くここを癒してくれるJazz。です
今聞いているのは最後の曲です♬
効いていると涙潤みます。
今とても辛い事あります。。。
ココログへも行って無いです(・。・;

生徒さんがもうすぐ来るので元気に戻りますけれど
一人でいると、悪い方に考えてしまって辛いです。
ココだけのお話にして下さいね(*^_^*)
今日の音楽は気持ちがアップしそうな感じがしますね

こんにちは。‥‥雨降ってますね。
ジャズで癒やされるのはジャズの神様の為せる業でしょうね。
そしてこんなのもありますから、時間のある時に聞いて下さい。
マイルス・デイビスの「Surrey with the Fringe on Top(飾りのついた四輪馬車)」です。
イメージとしては、「いつか王子様が」これに乗って迎えに来てくれるというところでしょう。ただこれは、メンバーも日時も違うので、曲の繋がりは無いんです。
聞き手の自由なイメージです。これもジャズの楽しみ方です。notenotesgood

http://www.youtube.com/watch?v=KvHt08Opi2g

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