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2014年3月15日 (土)

「品定め」‥8

馬頭はもう一つ浮気な女の話をするのですが、これは人付き合いが良く技芸も達者、容姿も無難だったもの

の、自分以外にも通う男がいて、何のことはない二股をかけられていた女だったというだけの話なので略すこ

とにして、続いて頭中将の内気な女の話に移ることにしましょう。これはこの後に、ある因縁で源氏が付き

合うことになる女「夕顔」のことで、さらに後々にその娘もこの物語の中で重要な役割を演じることになると

いう、数奇な運命の女だったのです。

 「ごく内緒で逢いはじめた女が、馴染みを重ねるうちに情が移ってきて、女からも私を頼る様子がうかがえた

のですが、根がおとなしく可憐で、恨みがましいことは一切口に出さずいじらしいほどでしたので、私をずっと

頼りにするようにと言い聞かせてもいたのです。親もなく心細い有り様で、子供も設けたのですが、愚痴もこぼ

すこともなく、こうもおとなしいのでつい私も安心して久しく訪ねることなく便りもしないことがありました。

ところが後から分かったことが、私の家内の筋から情け容赦のない圧迫を受けていて、気持ちが沈んでいたの

です。そんなことも知らずにいた私に、女は心細く思案にあまって撫子の花を折った手紙を寄せてきました。そ

こには、

《山がつの垣ほ荒るともをりをりに あはれはかけよ撫子の露》(いやしい家の垣根は荒れはてていても、何か

の折々にはお情けの露をかけてくださいませ、その垣根に咲く撫子の上に)とあります。私は思い出すなりすぐ

に訪ねて行きますと、いつものようにわだかまりのない素振りながら物思いも深い面持ちで、荒れはてて露で濡

れる庭をうち眺めて泣いている有り様に私は、

《咲きまじる色はいづれと分かねども なほとこなつにしくものぞなき》(いろいろに咲いている花の色はどれ

が美しいとも区別がつきませんが、やはり、常夏-あなた-に及ぶ花はないのです)と、これから常に訪れる約

束を交わして女(母親)のご機嫌を取り結んだのです。女は、

《うち払う袖も露けきとこなつに 嵐吹きそふ秋も来にけり》(夜がれの床の露を払う袖も涙で濡れている私に、

嵐まで吹き加わって、飽きて捨てられる秋もやって来ました)とさりげなく言いつくろって、恨めしく思ってい

るという様子は見せず、私の薄情さを心底でつらいと思っていると悟られるのは堪えがたいといった面持ちでし

たので、私も気を許し、その後も遠のいておりましたところ、どこぞ行方も知れず、母子とも姿を消してしまっ

たのです。」と頭中将は話を続けるのです。

先ほどの馬頭の話の「指喰いの女」の強情さが消えていて内気で可憐なのですが、肝心な女の本当の苦悩の情

を男が見損なっている点は共通しているというわけです。

 

<スナップは今週初めに歩いた鎌倉祇園山ハイキングコースのものです。八雲神社をスタート⇒東勝寺跡

までの短いコースで、鎌倉駅からも含めて1時間でした。>

1八雲神社

2階段が多い道です

3東勝寺跡(高時腹切やぐら)

4北条一門の菩提所の東勝寺跡。鎌倉幕府140年の歴史が閉じたところ

 

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心と体」カテゴリの記事

コメント

こんばんは☽
隠している心もちゃんと言わないと分からない
黙っていると、離れて行っちゃうって事ですね。
分かり合えているようで、そうでは無いのが人なのかな(・・?
鎌倉良いですね♪
5年ほど前に行ったけれど通り過ぎただけで廻りを見る事が出来なかったので
こうしてUPされていると歩いている気分を味わえます§^。^§
こちらへは、また来ますので♫続け行ってくださいねぇ
私は滅多にUPしていないのに、人には言えませんね(~_~;)
これから暖かく成るので♫どんどん歩いて行ってくださいねshine

今晩は。
源氏物語では男と女の間の心の通い合いにおける難しさ
(=ズレが必ず生じること)を強調し、そこに“ものの哀れ”
があるのだと言っている‥‥それを分かるのが肝だという
ことらしいです(私も、正直まだピンと来てないのです)。
しかし、男女間に限らず人の心の中は実際分からないもの
です。人との付き合いは、この不分明を確認するためにす
るのかと思えるくらいです。‥‥そうと分かっていて何故付
き合うのか‥‥これは永遠の謎のような気がします。shinethink

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