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2014年5月 9日 (金)

紫式部のブラックユーモア(2)

源氏は頭中将とは気付かず、この姫君のところに通う男かと思ってそっと屋敷を抜け出そうとすると、その男が

近寄ってきて「あなたが内裏から帰る途中で私をまいていなくなろうとしたのが恨めしくて後をつけてきたので

すよ」と言う声は頭中将だったのです。

《もろともに大内山は出つれど 入る方見せぬいさよいの月》(ごいっしょに宮中を退出したはずなのに、入る

方を見せぬ十六夜の月のように、行く先をくらましましたね)‥‥源氏はそれが頭中将と分かると腹が立ったも

ののひどく可笑しくもなり、

《里分かぬかげをば見れど行く月の いるさの山を誰かたづぬる》(どこの里も分け隔てなく照らす月の光を眺

めることはあっても、その月の入ってゆく山を尋ねてゆく人があるものでしょうか‥‥行く先まで後をつけ

てくるとはひどい人ですね)‥‥こんな時に和歌を詠み合うなどまったく非現実的ですが、前にも言いましたよ

うに紫式部のリアリズムは、和歌で表わされる哀れみの情に狙いを定めていると言っていいのです。紫式部が物

語を書く理由はひとえにそこにあったということになるのでしょう‥‥

 結局その日、源氏は(頭中将も)琴を弾く末摘花(姫君)の姿を見ることなく、二人は一緒の車で冗談を言っ

たり冷やかしたりし合いながら左大臣邸(葵の上、頭中将の実家)に帰っていったのです。源氏と頭中将は何か

につけて張り合っているので、源氏は「まごまごしていると義兄(頭中将)に先を越されてしまうかも知れない、

何とか邪魔されずに早く姫君と懇意にならなければ」と焦りの気持ちが生まれ、頭中将は「源氏のヤツ、どうい

う縁であの女に近付こうとしているんだろう、それはどんな女なのだろう」と気になり始めたのです。二人とも

先ほどの琴の音が耳について仕方がなく、「あの屋敷の有様も風情があったし、ああしたところに思いもかけぬ

可愛らしい女が暮らしているというのは本当のことだ」と思い込み、懸想文を送り始めたのです。ところがどち

らにも何の返事もなく、気の短い中将は「そちらには何か返事がありましたか、私は色々と書き送ったんですが

まったくナシのつぶてでそれきりですよ」と源氏に聞く始末で、源氏の方は(‥やはり義兄は言い寄ったのかと

思いつつ)「いや何も‥返事など期待してませんし、来ても見もしないでしょうよ」と空とぼけているのです。

その一方で源氏は命婦には「ハナから見向きもしないというのは一体どうしたことだ、さっぱり分からないで

はないか。私のことをかりそめの浮気沙汰と疑っているのか」と真剣になって問いただすのであり、命婦は「あ

の方はただもう遠慮深く内気で、その点で滅多にいらっしゃらない方なのでしょう」と答えるばかりです。

 そうこうしているうちに何ヶ月かたってしまい、常陸宮邸には何度も便りを出すものの何の手応えもないので

いよいよ世間並みの女(ひと)ではないと、意地も加わって命婦に強く手引を催促したのです。命婦は、こうな

ったら物越し(簾越し)でも源氏を姫君に引き合わせて、その結果はどうなろうと成り行きに任せればいいと決

めたのです。そして820日過ぎの月の出の遅い晩に源氏はお忍びで姫君のいる屋敷に来たのです。

 

<植物園にはナンジャモンジャノキ(ヒトツバタゴ)や、ハンカチノキもあります(ハンカチは風で落

ちてしまいました)。また木陰の草地にはキンラン(金蘭)、ギンラン(銀蘭)がひっそりと花を咲か

せていました>

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心と体」カテゴリの記事

コメント

こんばんはnight
今夜は冷えますね
皆空さんの説明は、物語を読んでいるようで楽しいです(#^.^#)
植物園でお仕事をしていると
本当に色々な植物たちが見えて良いですね。
私は写真で見ているだけので、まるで観光客の様に沢山観れて
楽しいです。
それでも、今後はどんどん暑くなるので、気を付けて下さいね~catfaceshine
そうそう私にも
4輪に乗った王子様現れるのでしょうか(≧∇≦)
何も行動を起こさないので、現れるも何もないですね~
と言うより何も考えていないんです。。。
まっいいか~
ヤレヤレ ┐(´(エ)`)┌クマッタネ

こんばんは。
今夜は冷えてますか?こちらは暑いくらいですよ。
今部屋の温度は24.3℃です。もう寝ますが、暑いから窓を開け
たままにすると意外に寝冷えしたりするので悩ましいところです。
今日(土曜)は休みでしたが明日は仕事です。寝不足は仕事に響
くので気をつけませんとねgoodconfident
“いつか王子様が‥”と思っていることがいいんでしょうね。
私なんかこの歳になっても‥‥ア、まあいいかhappy01sweat01

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