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2014年5月19日 (月)

紫式部のブラックユーモア(4)

頭中将は宮中での職務に出る途中に源氏の居所に寄ったもので、ならば一緒に参内しようということで、そろっ

朝食を済ますと一つ車に同乗して出かけるのです。中将は源氏の眠そうな顔を見て、「またこの私に色々隠し事

してますね‥」と恨みがましく冷やかすのでした。

 当時、新婚の直後は三日間連夜通うというのが習わしだったのですが、源氏は行く気がなく、後朝(きぬぎぬ)

の文(逢瀬のあと男と女がし合う手紙)も雨も降りだした午後になって、何もしないのもやはり可哀想と思い書

き始めたのです。これも普通なら翌朝早く送るものなので、源氏の熱意のなさのほどを示しています。姫君の屋敷

では、命婦や女房どもが後朝の文が昼になっても届かないことに心痛の思いでいたところ、やっと夕方になって届

いたものの、そこには

《夕霧のはるる景色もまだ見ぬに いぶせさそふる宵の雨かな》(夕霧の晴れる気配も見えないように、あなたが

心を開いて迎えてくださる様子もまだ見えない上に、いっそう私の気持ちの晴れない今夜の雨です。‥‥雨雲が晴

れるのを待つのはどんなにもどかしいことでしょうか)とあります。どこか言い訳がましい文面で、これでは源氏

の君は来そうもないと胸のつぶれる思いになるものの、「やはりご返事なさいませ」と皆で姫君に勧めるのですが、

姫君本人は昨夜のことを無闇に恥ずかしがってあれこれと思い乱れるばかりで、後朝の文のことまで気が回らない

有様なのです。「これではこのまま夜が更けてしまいます」と、例の良く気を回す侍従が書き方までお教えして、

《晴れぬ夜の月まつ里をおもひやれ おなじ心にながめせずとも》(晴れぬ夜に月の出を待っている里のように、

わびしい思いであなたのおいでをお待ちしている私の心を思いやりください。たとえこの私と同じ気持ちの物思い

ではないにしても‥‥)と、紫の色あせた古い紙に、昔の流儀の固いしっかりした筆づかいで文をしたためたので

した。源氏の君は(思わせぶりな風趣のかけらもないので)見るかいもなしとがっかりして文を下に置いてしまい、

いよいよ後悔の念がつのってくるのでした。が、その一方で、あの異常な恥ずかしがり様は一体どういうわけなの

だろうかとの思いも消えないままなのでした。

 その後、宮中行事の忙しさにかこつけて姫君のところへはすっかり足が遠のいてしまい、秋も暮れた頃に源氏の

とに命婦が参上したのです。源氏は「ずっと気にはなっていたのですが、その後姫君はどうしていらっしゃいま

か」と聞きますと、命婦は「本当にこれほどまでにお見限りのお心向けでは、お側にいる私達までおいたわしく

て」と泣かんばかりの面持ちで訴えたのです。命婦は、成り行き任せだったとは言え、自分が源氏の君を姫君に引

き合わせた故の結果に、やはり後ろめたさを感じていたのでしょう。

 その頃源氏はふとしたキッカケで、あの恋い慕う藤壺の宮と血縁の少女を(人さらいのように)二条院に引き取

って自分のもとで養育を始めていたのです(この少女が「紫の上」で、後々まで源氏にとって最重要な女性となり

ます)。‥‥つまり源氏の立場は、正妻として葵の上がいながら、桐壺帝寵愛の藤壺の宮を慕い(不倫を犯す)、

亡き東宮(皇太子)の未亡人の六条御息所を恋人とし、空蝉や夕顔(死去)を一時は恋人とし、手もとに可愛い養

女がいて、さらに評判を聞きつけた女人がいれば厭わず通うという、現代の常識からは“トンデモナク”かけ離れ

たものなのです。‥‥「末摘花」とはこの評判を聞きつけて通った女人の一人だったということです。そして雪が

ちらつき始めたある寒い夜、源氏はこの姫君をもう一度しかと見定めようと荒れ果てた屋敷を訪れたのです。

<植物園の花です。「シラン」=「紫蘭」で色を表している名と思うのですが、白いシランがあって驚きました。

サクラソウの野生種があったり、来園者を楽しませるクイズ板もあちこちに立っています>

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コメント

こんにちはcloud
この時間今にも雨が降りそうになって来ました。
最近日中は暑くなりましたよねsweat01

葵の上が可哀相に成って来ますね
今ではもちろん考えられないけれども
昔も源氏のような人は中々いないのではないかな。
秋が過ぎ、冬に成って荒れ果てた敷地を見て…どう思うかな
続き楽しみです
紫蘭は我が家にも今さいていますよ❀
白があったのですね凄い紫蘭って紫だからそう名がついたのかと思ってました(*^。^*)
夏椿何色でしょう~理想は白ですけれどcoldsweats01

こんばんは。
私も明日は雨になってほしいと思います。
雨の日は屋内作業で、草刈機の手入れをしたり、木に付ける名札を作ったり
の軽作業が中心となります。v(´∀`*v)ピース
朝、夕の園内巡回は雨でもやりますが。(;´д`)トホホ…
光源氏はもちろん架空の人物で、恵まれた地位と経済の後ろ盾がなければ
到底不可能な生活ぶりです。源氏は紫式部が創作した“理想像”ですが、彼に
関わった女性が幸福を得たかはハーフ・ハーフ(真央ちゃんじゃありませんが)
でした。つまりこの物語は“四輪馬車に乗った王子様”を描こうとしたのではな
いんですね‥‥教訓を語ろうとしたのでもない。‥‥では何をthinksweat02
ナツツバキの花は白です。正解sign01shinegood

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