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2014年6月15日 (日)

紫式部のブラックユーモア(8)

源氏と典侍のやり取りの騒ぎは頭中将の耳にも入らないはずがなく、そうなるとこういうことにかけては人一倍

負けず嫌いな頭中将は、好色な典侍にめざとく接近してたちまち懇ろの仲になったのでした。そんなことも知ら

ないまま幾日も過ぎてしまったある夜、源氏は宮中の内侍の詰所のあたりを歩いているうちに、中から聞こえて

くる琵琶の哀れみ深い音色を耳にし、それが典侍の奏でているものだと分かると近寄って、外と内とで誘い謡

をかけ合った挙句そっと部屋に入っていったのです。するとそこで、例によって、そんなこともあろうかと網を

張っていた頭中将に見付けられてしまったのです。

 頭中将は日頃から源氏が真面目を装って、自分を何かと非難するのが実にいまいましいと思っていたので、何

とか源氏のお忍びの現場を突き止め懲らしめてやろうと、その機会をずっと狙っていたのです。ですからここで

願ってもない場面に出くわして思わず嬉しくなって、一計を案じ、突如としてここに典侍の“通い夫”が訪れて

しまったかのようにしたのです。そしてその通い夫が間男に気が付き刀を抜かんばかりに怒りに震えている風を

装うと、源氏は男の気配に直衣(のうし)を抱えて半裸のまま後ろに隠れようと慌ててひろげる屏風を、逆に男

は音を立ててたたんでいくのであり、その間に割って入った典侍が「ああ、あなた、お止めくだされ、ああ!」

と大声を出して取りすがるという“阿鼻叫喚”の展開はドタバタ喜劇そのものだったでしょう。さすがに頭中将

は吹き出してしまいそうになると、源氏も男が頭中将だと気付いて刀を持つ腕をつかんで「あなたという人はま

たなんということを!」と叫んで思い切りつねると、もがき合いをしながら両人とも直衣もなにも脱げ破けてし

まったのでした。そしてまた非現実的ながら、お互いに吹き出しながら歌を交わして、どちらも破けた直衣を

抱えたしどけない姿で帰って行ったのです。

中将《つつむめる名やもり出でん引きかはし かくほころぶる中の衣に》(包み隠そうとなさる浮名が漏れ出て

しまうことでしょう。引っ張り合って、二人の仲を包んでいた衣がこんなにほころびてしまったのですから)

源氏《かくれなきものと知る知る夏衣 きたるをうすき心とぞ見る》(薄い夏衣では何も隠しきれないものとよ

く知っていながら、それを着ているのは浅はかというもの。あなたと典侍の仲は知られないではすまないものと

承知しながら、こうしてやって来たあなたは薄情な人です)

 この話では、典侍は5758歳とされていて、今の感覚で言えばさしずめ60歳代後半の女性と言ってもいいで

しょう。この“老女”を二人の高貴な20歳前後の若者が我が物にしようと争った(関係も持った)という経緯、

最後には二人が夜中に半裸で宮中を遁走するという図柄は、まさに紫式部の“諧謔精神”の奔出なのでしょう。

紫式部はこの物語で王朝貴族の生活様式を雅やかに美しく描くことを主眼としたわけでは決してなかったのです。

<梅雨に入り、植物園ではこの季節にふさわしい花が咲き出しました。ヤマアジサイ、ギボウシ、花菖蒲、

ノカンゾウ、など。それからオオミズアオが羽化したばかりの姿を見せました。>

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コメント

こんばんはnight

今日は良いお天気でした(#^.^#)

幾つに成っても若くいたいってどの時代でも
永遠のテーマなんでしょうね♪

紫陽花も菖蒲も花盛りですね

オオミズアオって蛾だったのですね
羽が葉っぱみたいで綺麗です(#^.^#)
中々見つけるのも難しいのではないですか♫
成虫は口が退化しているので、飲み物も食べ物も食べず
4日程度で絶えるそうです…
なんだかちょっと可哀相ですね。

こんばんは。
幾つになっても若くいたい=年をとっても色気は衰えない
ということでしょうね。これは生きている証しかも知れません。
草木も花が咲かなくなった時が寿命ですからね。
オオミズアオの幼虫はサクラやミズキの葉で育つようですが、
植物園にはこれらの樹木がたくさんあって、私が見つけたのも
このどれかの木の茂みの中だったんだと思います。shineeye
昆虫は幼虫時代が長く、成虫が数日ということが多いですね。
蛍、カゲロウ、蝉など‥‥そう言えば「源氏物語」にも<空蝉(うつ
せみ)>という巻があって、源氏が“空しい愛”を味わうところです。despairheart03

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