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2014年8月21日 (木)

「紫の上」‥‥若紫(5)

いよいよ源氏が幼い姫君(紫の上)を“略奪”する場面を見てみましょう。略奪と言いましたが、今の基準で言

えば“誘拐”にほぼ等しいものでした。

 姫君の世話をしていた祖母の尼君はとうとう亡くなり、今まで疎遠気味だった実父の兵部卿宮(ひょうぶきょ

のみや)の京の別邸に姫君たちは移り住んでいました。源氏も尼君の亡くなった後に姫君を慰めに訪れてはいた

ですが、その父宮が姫君を引き取る話が進んでいることを源氏は耳にするや居ても立ってもおられず、ある日

まだ夜明け前の暗い時刻に左大臣邸からこっそり御車で別邸に向かったのです。その前の日には父宮も引き取り

の準備のため別邸に寄って姫君の様子を見に来たりしていたのですが、折も折こんな時刻に何事かとたじろぎな

がら応対する乳母の少納言をはじめお付の女房達を尻目に、源氏はまっしぐらに姫君が休息する部屋に入ると、

夢うつつの姫君を抱き起こしてしまったのです。姫君は寝ぼけ心に父宮が来たと思ったのがそうではなく源氏だ

ったことに気付くと驚いて怖がった様子を見せたのですが、源氏は髪をなでつけながら「さあ、父宮の使いで来

たのですよ。私も父と同じなのですよ」と言うと姫君を抱きかかえたままさっさと御車に乗り移ってしまったの

です。そしておろおろと途方に暮れるばかりの女房共に「誰か一人姫君についてきなさい。だめなら後からでも」

と言うと、これを止めるすべもないと観念した少納言はありあわせのお召し物を急ぎ取り出して御車に同乗した

のでした。そして最初から手はず通りの二条院の西の対に姫君達は連れ去られてしまったのです。

 乳母の少納言はまだ夢を見ているような気分で、不安な面持ちで「父宮がお知りになったら何と仰ることだろ

う、これから先姫君の身の上はどうなるのだろう。‥‥どの道、おすがりする方々(母親、祖母)に先立たれ

たことがご不運だったのだ」と泣きたくなる気持ちをじっとこらえていたのです。姫君も震えて涙ぐんだまま横

になっていて、やがて夜がだんだん明けてくると、御殿の造りや部屋の飾りだけでなく庭の白い玉砂利などの輝

くような風情が目に入ってくるのでした。それらはすべて今までの暮らしでは見たこともないものだったのです。

 日が高くなってから源氏の君も起きてきて、さっそく姫君のお世話をする女童(めのわらわ)を4人ほど付け

と、おもしろい絵や玩具や手習いの書などをお見せしながら「さあ、いいかげんな気持ちの者がこんな風にお

尽くしをする筈もありませんよ。いいですか、女は気立てが良いことが一番なのです。」ともう今から色々と

始めていらっしゃるのです。

‥‥こうして紫の上という理想の女性造りがいよいよスタートしたのです。もちろんこのような大それた事は時

の天皇の次男という親王の権勢だからこそ出来た話ですが、紫式部がこういったシナリオを設定した経緯、意図、

背景にはどのような真相が潜んでいたのでしょうか。

 

<植物園ではオミナエシ、テッポウユリ、シュウカイドウなども咲いています。

さらに変化朝顔展も開いています(変な朝顔展です!)>

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コメント

こんにちはcloud
昨夜は激しい雨、今にも降りそうなお天気ですけれど
皆空さんの所は如何ですか

読んでいるとちょっと可哀相に成りますね
自分で意見を言えず、生き方を選べない辛い時代ですね

変化朝顔本当に変わってますね♪❀

今日は。
残暑はまだ厳しい日もありますが、夕方になれば
秋を感じさせる涼しい風が吹いてくるようになりましたね。
変化朝顔は、え?これが朝顔?というくらいのもあって
見ていて飽きなかったですよ。shine
「紫の上」はまだ続きます‥‥thinksweat02

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