「六条御息所」‥‥(3)
源氏は病の老乳母の邸の近くで覗き見した夕顔(質素な宿の垣根に夕顔のツルがかかって花が咲いていたの
でこう名付けられる)の家の偵察を随身(ずいじん、源氏のお供)の惟光(これみつ)に託していたところ、
かなり詳しい報告があったのです。それによると、主人と見られる若い女人が誰なのか分からないものの、頭
中将の一行らしいものが前の大通りを通りかかった時に、女童や女房達が家の中から覗き見して、「あれは中
将様の随身の誰それ」と騒ぎながら見送ったりしたことがあり、その家の中にたいそう顔立ちの可愛らしい女
人もいて、それが女房仲間の振りをしているが女主人に間違いないようだ、と言うのです。それはもしかした
らあの頭中将が忘れられずにいるかわいそうな女ではないのか、と真相を知りたくてたまらないといった源氏
の面持ちを見て惟光は、源氏の身分が察知されないようにうまく夕顔の家に取り入って、夕顔への手引きを
果たしてしまうのです。
こうして源氏は自らの素性を知られないまま、また夕顔の素性も結局は分からないまま逢引きを重ねること
になったのです(夕顔も自分の素性を頑なに隠し続けたのです)。そして夕顔にすっかりうつつを抜かしな
がら源氏の頭をよぎったのは、この愛らしい女人はあの“雨夜の品定め”で頭中将が話していた「常夏(とこ
なつ、ナデシコの古名)の女」ではなかろうかということであり、また「中の品の女」すなわち中流の身分の
中に思いがけなくいい女がいる、というものだったのは言うまでもありません。
そうこうするうち、とうとう中秋の八月十五日の夜に源氏は夕顔の家に泊まってしまったのです。昔はこの
夜に男女が契りを交わすのは不吉であるとされたのです。‥‥そして忌まわしいことは起こったのです。
<常夏(ナデシコ)です。この季節は姿を隠します。こども植物園には立札しかありませんでした。
近くの花屋にかろうじて一株だけありました(ただし本当のカワラナデシコではありません)>
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こんばんは♫
良い所でお話の続きを〰〰〰
最近はバタバタと忙しい日々でした(^_^;)
植物のお仕事をしていると季節の移り変わりが良く分かるのですよね♫
植物さん達も冬支度でしょうか(#^.^#)
投稿: na nori | 2014年11月12日 (水) 21時47分
今晩は。


源氏物語の話のペースでずっと行こうと思うんですが‥‥
時々“義憤”が湧き起こってきて、ペースが乱れることが‥‥
今も、急に番外編をやりたくなって、六条御息所を先にする
か迷っているのです。最近は山も少し休んでいます‥‥
私も気分的に冬支度かも知れません(冬眠したい)
投稿: 平戸皆空 | 2014年11月12日 (水) 23時28分